えらいものを観てしまった

大阪の南港は埋め立て地である。
空き地が目立ち雑草が風に揺れている寂しい場所である。
其処にぽつんと建っているライブハウスで昨夜ボブ・ディランを観て来た。


アコースティックギターはおろかエレキも弾かず、
オルガンを弾くと云うより鍵盤を押さえながら、
或いはハモニカを吹きながら彼は唸っていた。
それは歌というよりまるで念仏で、
メロディすら切り捨てられて丸裸になった歌詞がぼとぼとと口から零れ落ちているようだった。
そんな彼が突然出す合図を見逃すまいと、
バンドは終止緊張しているようだった。
メンバー紹介以外MCも無し。
サービススマイルさえ無し。
そんなライブに完膚なきまでにヤラれてしまった。
忠臣蔵の討ち入りで吉良邸の門を叩いていた大きな木槌で、
百回くらいボカボカとやられた感じである。