寡黙な男だった

海でも独りぽつんとアウトにいて、他の連中とは別のうねりを待っているようだった。
陸ではとても不器用で、何度も仕事を替えていたようだが
最後は生見でサーフショップをやっていた。
そのショップの正面にある建物で、彼は随分前に食堂をやっていたことがあって、
いつだったか僕が海に入っている間に一緒に行った女の子が僕の車で帰ってしまい、
着替えも財布も無く途方にくれていた間抜けな僕を、
当時あまり面識も無かったのに助けてくれたことがあった。
背が高く金髪で、顔の作りも外国の人のようだった。
波乗りはスムースで無理なところが無く、これも日本人離れしているように見えた。
3人の小さな女の子がいるが、奥さんとは別れてしまったらしい。
心残りだったろう。


久保光洋   海へ還る